アメリカ不動産を扱う当社は、主にカリフォルニア州(ロサンゼルス近郊)、テキサス州(ダラスフォートワース・オースティン・ヒューストン)、ハワイ州、ジョージア州(アトランタ)の居住用不動産を扱っておりますが、その中でもやはりテキサス州の物件を買いたいという問い合わせを多くいただくようになりましたので、改めてこの記事で取り扱うことにしました。
テキサス州のイメージと実際
皆さんのテキサスのイメージはどんなところでしょうか?カウボーイ、石油化学産業、ジョン・F・ケネディが暗殺された場所、などありますが、かくいう私もダラスに行くまではそのようなイメージしか持っていませんでした。当社副代表の橋本は、2017年頃からテキサス州ダラスに数年間駐在しておりましたが、その間に得られたダラスの印象は下記の通りです。
・他の都市に比べて街並みや路地が綺麗
・高速道路の延長工事、商業ビル等の大規模施設の開発が盛ん
・日本人を含めたアジア系が多い。日本食レストランが多い
・物価が割安(アメリカの東海岸は西海岸に比べて)
もちろん、これには主観も混じっておりますが、特に開発が盛んに行われている、という点について。ある米調査会社のレポートによると、2020年8月時点、テキサス州ダラスでは4,000件以上の開発が進行中で、この数字は都市毎のランキングとしては、全米で7位(1位は同テキサス州ヒューストン、ニューヨークは3位にランクイン)でした。また、同じくテキサス州ダラスの2022年上半期における住宅地等を含む大型開発案件の総額は約8,500億円で全米トップクラスの規模でした。
人口が増え続ける州、テキサス
アメリカ不動産への投資に限らず、不動産投資全般の鉄則として、転売目的以外では数年は保有することの多い不動産ですので、人口が増えているエリアに投資をする、というものがあります。人口が増えていれば、売買数のボリュームも賃貸需要も増えます。局所的な人口増ではなく、日本で言うところの都道府県単位、アメリカ不動産でいうところの州単位や大都市単位で人口が増えていなければいけません。
その点、テキサスは2010年からの10年間で約400万人の増加(全米1位)、2040年には2010年比+約60%の4000万人に達する見込みです。テキサス州全体では人口の増加率は2018年から3年連続で全米1位(出所:JETRO)でした。下図は、2018年の米国勢調査のデータを基にブルームバーグ誌が作成した「2017年から2018年のエリア毎の人口増減」を表した図です。東西海岸部と北部から、南部エリアに人口が流入していることがわかります。ダラスエリアには毎日212人が引っ越してきており、際立った人口増加が見られます。
【2017年から2018年のエリア毎の人口増減】
トヨタの北米本社がダラスに拠点を移転したことはよく知られていることですが、あらゆる分野の企業が集積し、人も雇用を求めて大量に流入しています。ダラスだけではありません。イーロンマスク率いるテスラ社が本社を構えるオースティン市も人口増加が顕著です。
なぜこれほど人が増えているのでしょうか?
よく語られる理由は二つあります。テキサス州には州の徴収する法人税や所得税がありません。利益が毎年増加し続けるような成長企業は出来る限り税金を減らして新しい投資にお金を使いたい、という考えに至るのは普通のことです。
そして二つ目は、まだ物価が低く、家もそうですがあらゆるものが割安だからです。
アメリカ不動産投資でよくみられる指標に年収倍率というものがあります。不動産の価格を年収で割ったものです。高ければ高いほど、一般的にはそのエリアの物件は割高で、安いほど、そのエリアの物件は割安、と考えることができます。カリフォルニア州のロサンゼルス近郊などではすでに年収倍率は10倍前後かそれ以上であることが多いですが、テキサス州のダラスやヒューストンはまだ3~5倍程です。なお、東京も多くのエリアで10倍前後かそれ以上です。伸びしろ、という観点ではまだまだ伸びる余地はあるわけです。
アメリカ不動産でテキサス州に注目すべき本当の理由は?
ただ、もう少し頭をひねって、なぜそれほど南西部は人口、経済ともに成長が著しいのか、その本質的な理由を当社なりに考えてみました。
もちろん、税制優遇(法人州税がゼロ)や物価の割安さなどが企業や人を引き付けている、という表面的な説明は妥当かと思います。ただ当社は、もっと深い背景として、アメリカという国特有の事情が働いているのではないかと考えます。
日本はアメリカほど地域間での物価差はありません(2015年のニューヨーク都市圏の消費者物価地域差指数は121.9と全米平均より約+22%高い一方、日本は最も物価が高い東京で全国平均比+10%未満)。皆さんご存じの通り、アメリカは先進国の中では珍しくジニ係数が高く、格差の大きい国として有名です。この良し悪しは別として、物価や所得の地域格差が大きい方が、気圧が高いところから低いところに風が生まれるように、物価の高いところから低いところに人やモノの流れが起こり、大きな時代のうねりの中で、あらゆる都市が興隆・衰退を繰り返すことで国全体の経済を活発化させるダイナミズムが生まれるように感じられます。百年後、二百年後の人口マップがまた元に戻っているかもしれません。なんにせよ、差がある、ということによる人やお金の流れの活発性は先進国の中ではアメリカ特有のもので、近年の南西部流行りの一因となっているように思います。
今回は、開発が進み、人口が増えているテキサスの現状をご紹介いたしました。数年間の小さな波だけを見れば、人口増が不動産価格や経済の最大ドライバーにならないこともありますが、とくに州やエリアでの格差も大きいアメリカという国での不動産投資においては、中長期的な視点では、人口が増えるかどうか、というのはやはり不動産市況のみならずその地域の経済が上向くかどうかを左右する最も大事なポイントです。
経済の盛り上がりが続く州、人口が増加し続けている州、テキサスになぜいままた投資家が着目しているかを今回解説しました。
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