今回はアメリカの固定資産税について解説します。
アメリカの固定資産税率
アメリカの固定資産税の平均は日本の平均より高いです。州を含む各地方自治体によって異なりますが、ハワイなどの低い州では0.5%未満のエリアもあれば、当社の取り扱いエリアのカリフォルニア州ロサンゼルス近郊は多くのエリアで1.0%以上、カリフォルニア州の平均は0.8%程、テキサス州に至っては平均が1.8 %(いずれも2022年のデータ)を超え、ダラス近郊は2.0%を超える群(カウンティ)も多くございます。
アメリカの固定資産税の納付方法
固定資産税は、州によって設計がされ、その下のカウンティやシティ(市)が課税団体となるケースが多いです。いずれにせよ地方税のため、州自体やカウンティ・シティなどの地方当局が課税主体となることがほとんどですが、納付方法についても州・カウンティ等によって異なります。エリアによっては年に1回だけまとめて納めるケース、2回や3回に分けて納めるケース、など回数も異なれば、納付先も1か所だけでなく州とカウンティ等、2か所に納付しなければいけないエリアもあります。なお、テキサス州ダラス近郊では年間の納付回数は1回で1月~12月の1年間分を翌年の1月31日までに支払う場合が一般的です。
例えば、一般的なものとして、2022年1月~12月の固定資産税については、2022年1月1日時点の状態で査定され、同年5月頃から査定結果に対する意義申し立て及び減額交渉を実施。協議が決着次第、10月頃に固定資産税請求書が課税主体から所有者のもとへ送付されます。これを翌年2023年の1月31日までに納税、という流れになります。固定資産税の減額交渉や納付の手続きはまったく難しくないですが、制度の変更などは多い上にエリアによって制度が異なるため、その物件の所在するエリアに精通した米国税理士や米国公認会計士、あるいは彼らと提携する不動産屋によく確認されることをお勧め致します。
なお、州ごとのスケジュールについては下記のようなサイトを参考にされてください。
http://nptg.com/tax-calendar/ (参考:National Property Tax Group)
アメリカの高い固定資産税、投資家にとって悪いこと?
日本の物件は評価額が実勢価格の7割かそれ以下であることが多い一方、アメリカの場合は元となる評価額が日本と異なり上昇することが多いです。これは、アメリカでは築年数が経過しても価値が下がりにくいことに起因しているため、日本では考えづらいですが中古不動産の固定資産は上昇するケースが多いです。
ではテキサス州のように2%を超えることは投資家様にとって実質利回りを下げるだけの悪いことなのかという点ですが、必ずしもそうではありません。テキサス州の場合、人口増に伴い、この高い固定資産税を原資として、自治体は学校や公園などの公共施設の整備に努めます。その結果、当社の副代表が米国駐在時に感じていたように、非常に整った綺麗な街並みが生まれ、学区スコアも高くなり、同州への人口の流入をさらに後押しするような街づくりが推し進められます。これが物件価格の上昇に繋がり、空室率の抑制につながり、賃料の上昇につながるわけです。日本では評価額が下がることが多いことから中々馴染みのない考え方ですが、売却益ありきの米国不動産のため、せっかく上昇する賃料・賃料収入から高い固定資産税が引かれても、売却時に元が取れるどころか大きく得をするケースが多い、ということです。
アメリカの固定資産税から派生した税金の話
以上の話は、もちろん固定資産税についてだけ当てはまる話ではなく、少しずれますが、日本とアメリカの地方自治の仕組み、言い換えれば「誰がリーダーシップを持って、人の住む町や人の受ける教育などの仕組みをアップデートしていくか」、は全く異なります。端的には、地方集権が進んでいるかいないか、という話です。アメリカでは州主権、日本は国>地方。アメリカでは連邦政府の権限は軍事や通貨など案外一部に限られており、人の生活に直結する教育や医療や公共工事などの権限やお財布は州がほとんど持っています。税の多くも州税です。
国土面積の違いや国の歩んできた歴史の違いなどによるもので一概になぜこうも違うのかという点は説明が難しいですが、国が先にあって地方自治体に権限を分けた日本と異なり、アメリカは州の権限を少しずつ国(連邦)に分けてあげた、譲ってあげた、という長い歴史の経緯があります。地方自治体(州)に主権があり、国がゆっくりと進めるより早く、機動的に、それぞれの州の抱える問題にそれぞれの州が対処し、そのための財源を確保するのも州で行う。それも、その州の土地柄や開発方針や文化、景気などにあわせた方法を取る。
だから、例えば州の法人税をなくし人と会社を集めたテキサスでは、企業が増えて人の増えても、そのエリアの住環境は比較的速やかに整備される、教育もすぐに行きわたる。数年でガラッと町が変わる。これが、いまなお世界を牽引するアメリカ経済を支える基盤の特徴の一つかもしれませんし、アメリカ不動産投資に関しても、定性面で考慮に入れるべきポイントかと思います。
以上、今回はアメリカの固定資産税についてでした!
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