明けましておめでとうございます。
株式会社ゴードルの吉永です。
2022年後半から2023年の米国不動産市場は非常に変動の激しい1年間でした。下のグラフは2014年から今年10月までのS&Pケースシラー住宅価格指数(青)と米政策金利(赤)の推移です。※引用:FRED / S&P
米国住宅市場の異常な動き
日本の不動産市場と異なり透明性の高い米国住宅市場には、市況が存在します。
ほとんどの物件で個別の価格の動きはせずに、市場を構成するひとつのコモディティとして全体の市況に応じて物件価格が推移します。この透明性が米国住宅をして投資商品たらしめているといえます。話がずれましたが、通常は金利が上がれば住宅市況は下落し、金利が下がれば住宅市況は上昇します。
この上のグラフの通り、2022年前半まで政策金利は非常に低い水準でしたので、米住宅市況は上昇を続けましたが、同年後半の金利上昇に伴い一時的に市況は下落しました。が、そのすぐあと、2023年に入りまた、金利は高水準を維持しているにも関わらず市況は上昇基調に転じました。
参考記事としてBloombergの「全米の住宅価格指数、10月は過去最高を更新-9カ月連続で上昇」というタイトルの記事を共有します。
なぜ米国住宅市場は異常だったか?
なぜこういう、金利が高いのに市況が上がる、という「普通では起こらないこと」が起こるのか?それはこのブログでもこれまで何度かご説明の通り、「住宅在庫の低さ」と「実需の堅調さ」に起因します。
米国の流通住宅のうち7割以上は中古住宅です。これが、米国住宅を投資商品たらしめている点の一つでもあるのですが、それほど中古住宅の多い市場では、新規住宅を市場にどんどん投入する事が難しい、あるいは投入したところで全体の需給への影響は限られてしまいます。
そして、ホームオーナーたちは「過去にせっかく低い金利でローンを組み家を買ったのだから、いまわざわざ引っ越して(家を売って)、高い金利でローンを組みなおしたくない」と考えるのが自然です。そのため、家を売りません。そうすると中古住宅の供給量も少ないままです。これに加えて上述の通り新規住宅の供給も限定的ですので、住宅在庫は非常に低い水準が続きました。
加えて、皆さんもご存じの通り、米経済は軟着陸するとの見方が強く、この見方を支えているのがやはり実需および消費の強さです。米経済はクラッシュしない、むしろ賃金上昇を続けながら緩やかに景気後退する、という楽観的な見方が多い中、コロナ禍明けのリベンジ消費のあと一時収縮した消費も再び足もと活発になり、世界金融危機のときと異なりクレジットカードや住宅ローンの支払い遅延率も低く、個人のバランスシートも健全です。
なので、金利が高くても、実需で家を買う人も(まだ多くはないですが)一定数おり、あるいはファンドや個人投資家はこれから金利が下がれば更に住宅市場が上がると見据えて今のうちに仕入れておこうとキャッシュや低金利の日本からファイナンスして買い占めが進んでいます。
以上の理由から、住宅在庫が低い=供給が少ない、そして実需が強い=買い手がまだ多い、という需給両面で住宅市況を押し上げ、金利が高くても上昇する米住宅市場、という構造が2023年後半に続きました。
以上が2023年の米国住宅市場の簡単な振り返りですが、2024年はどうなるでしょうか?それは次のブログで解説します!
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