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アメリカの商業用不動産市場がマズい!


こんにちは​!ゴードルの渡辺です。


​少し間が開いてしまいました。

今回は商業用不動産についてのコラムです。

相変わらず米国の居住用住宅市場は堅調な状況が続いていますが、​実は今、米国では商業用不動産市場が危ないです。その理由をご説明します。

アメリカの​商業用不動産(以下CRE=Commercial real estate の略)の市場規模は​2023年4月時点、​およそ20兆ドル強と見積もられており、アメリカ最大の市場規模を誇る居住用住宅市場の市場規模である55兆ドル​、米国株の約45兆ドル、米国債の25兆ドルに次いで4番目に大きい市場です。世界2位の住宅市場である米居住用住宅市場ですが(1位はまだ中国)、米CRE市場もこの4割程の市場規模があるわけです。

​今日はなぜいまアメリカのCRE市場がマズい事になっているのか?

これを説明します。理由は3つあります。

  1. CRE市況が特に大都市圏で下落中

  2. CRE向け融資が向こう数年で大量に満期到来

  3. 中小銀行は総資産対比でのCRE向け融資割合が高い


では一つずつ見ていきましょう。

1.CRE市況の低迷

​まず①の「CRE市況の低迷」については、背景はいたってシンプルです。リモートワークやオンラインショッピングが常態化したからで、特にニューヨークやダラス、ロサンゼルス等の大都市圏のオフィス市況が低迷しています。


空室率はまだまだ高く会社はオフィスに戻ってこず、賃料も低迷中です。この現象が解消されることはないと言われています。

2. CRE向け融資の多くが向こう数年で満期到来!?

次に②のCRE向け融資が向こう数年で多く満期到来する件については、多くのメディアが伝えている事ですが、低金利時代に膨らんだローンの満期が向こう2年で大量に到来するといわれています。 CRE向け融資残高の合計は2022年末時点で約3.57兆ドルあります。冒頭の通りCREの市場規模は20兆ドル強なので、全体の市場規模に占める融資の割合は20%未満であり、また銀行の合計資産が30兆ドル弱であるのに対しCRE向け融資残高は4兆ドルに満たないレベルです。※詳しくは下記リンクのFRBの今年5月に公表されたFinancial Stability Reportの25ページ目のTable Aをご参照下さい。


https://www.federalreserve.gov/publications/files/financial-stability-report-20230508.pdf

しかし、​このCRE向け融資残高の3.57兆ドルのうち1兆ドル以上が2025年末迄に満期を迎えるといわれています。そしてその多くが、高い金利と低迷するCRE市況によりロールオーバーが難しいと言われています。

3. 中小銀行は総資産対比でのCRE向け融資割合が高い

そしてこの点は、最後の③の「中小銀行は総資産対比でのCRE向け融資割合が高い」にも関わります。同じくFRBのFinancial Stability Reportの同じ表中に、Otherという銀行があります。端的にはこのOtherは中小銀行です。カテゴリー1~4に分類されない中小規模の、しかし数としては大量にある中小銀行です。このOther(中小銀行)ですが、この表を見ると合計総資産7.4兆ドルに対して実に1.55兆ドルがCRE向け融資残高です。大規模の銀行に比べ圧倒的に高いCRE向け融資比率であり、また、CRE向け融資残高3.57兆ドル中、中小銀行が1.55兆ドルを占めています・・

まとめ

以上の1~3を総合すると、CRE市況が下落する上に、多くの借り手が向こう数年で借り換えてくれなくなる、そうすると何が起こるか?最大の貸し手である中小銀行のデフォルトリスクが高まります。現時点の物件価値に対する融資比率であるLTVは市況下落により上昇し、借り手はなおさらロールオーバーが難しくなり、貸し手の中小銀行のCRE向けエクスポージャーは高いので中小銀行の経営難、経営破綻が連鎖的に起こるかもしれません。 もっとも、やはりそこは中小の銀行なので米国全体の金融システムに与える影響は大きくないというのが今の見立てですが、シリコンバレーバンク(SVBも上述のOtherに分類される中小銀行でした)のようにベンチャーという特定のセクターに多くの融資をする銀行が経営破綻となれば、特定のセクターでの信用収縮が起こり、これが連鎖的に広がる可能性もあると考えます。 という事で今回はCRE市場のリスクについて解説しました!居住用住宅市場が堅調でも手放しには喜べませんね・・

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