今回は、連載「アメリカ不動産市場の特徴」の第二弾、「分業化が進む米国不動産市場」についてです。
それでは解説していきます。
ブローカー
まず売買を取り次ぐエージェント・ブローカーについて。原則、買い手と売り手の双方の合意などがない限り、エージェントは両手取引も出来ません。買い手と売り手のそれぞれにブローカーなどが付きます。買い手側につくエージェントをBuyer's agent、売り手側につくエージェントをSeller's agentなどと呼びます。また、彼らへの手数料は売買取引においては売り手がすべて支払うことがほとんどです。つまり、例えば手数料が3%なら、売り手がBuyer's agentに3%、Seller's agentに3%を支払います。
なお、徹底的に日本側で投資家様サイドに立って投資家様をサポートする当社の収益は、購入時にコンサルティング料という形で手数料を投資家様より頂き、管理プロセスや売却まであらゆる工程でお客様をサポート(ご購入の時点で現地のエージェントに手数料を支払い頂く必要はございません)、そして売却時は可能な限り手数料を合計で3%~5%のレンジに収まるように当社で売却をアレンジさせて頂きます。
エスクロー
次に、エスクロー(Escrow)という、主に決済や権利関係における手続きの実行、諸経費の精算などを行う売り手と買い手の間の中立的な第三者機関について。
エスクローは日本の不動産投資をされる方にはあまり馴染みのない言葉だと思います。
エスクローは不動産取引を保全します。日本の不動産売買では、手付金や売買代金などは直接相手に司法書士を介して行うことが多いかと思いますが、アメリカの不動産売買では、買い手はエスクローの指定する口座に各費用を振込み、そのお金はエスクローに信託されます。所有権が移転されれば、売主に初めてお金の支払いがエスクローによって行われます。タイトルレポートの確認等もこのエスクローが行い、決済の前に物件の抵当権を確認し、これが付いていれば決済前に解除を促すのもエスクローです。
したがい、地面師のようななりすまし業者が売買代金を持ち逃げするようなことが起こりません。広大な土地のアメリカで、物件を直接は見ずに購入する人が多いため、遠隔でもフェアの取引を行うことが出来る仕組みで、アメリカ不動産投資をする海外投資家にとっても重要な市場の透明性に資する働きをしているのがこのエスクローです。
その他
建物の診断を行う業者が住宅診断士(インスペクター)、物件担保評価などを行うのが鑑定士(アプレイザー)です。あらゆるプロセスにおいて業者の中立化・第三者化、つまり分業化が進んでおり、だれか一人のプレイヤーが意図的に利益操作をしたり、買い手や売り手に金銭的被害が生じるような業者同士の結託が生まれないような仕組みが整備されています。
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第一回目で解説した、透明性と情報の網羅性の高い不動産取引データベースであるMLSや、民間サービスのZillowやRedfinなどは、情報の非対称性を解消するするための仕組みで、一言で表現すれば公平性を担保するものですが、今回解説したアメリカ不動産売買・アメリカ不動産投資の各プロセスにおける中立的な第三者機関と分業の仕組みは、買い手と売り手のパワーバランスに差が生まれることがないように(どちらかの側で結託が起こるなどしないように)、あるいはどちらかが嘘をついて相手を騙せないように(代金の持ち逃げや瑕疵の隠蔽など)、整備された安全性を担保するものです。
次回は、「アメリカ不動産市場の特徴」最終回、アメリカの中古物件はなぜ値上がりするのか、です。
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